チンキャップってこんな矯正方法
成長期の子供の下顎前突(かがくぜんとつ:受け口)の治療に有効な矯正装置として「チンキャップ」があります。「チン」は英語の「Chin」で、顎のこと。キャップは「蓋」の意味があります。名前のとおり、下顎に装着する部分と頭に固定する部分、そしてそれらを繋ぐゴムバンドで構成されています。一見すると、同じ歯科矯正装置の「ヘッドギア」と似ていますが、ヘッドギアは上顎に装着して、上顎前突(じょうがくぜんとつ:出っ歯)を矯正する装置となり、治療目的が異なっています。
改善が期待できる症状
チンキャップは「下顎前突(かがくぜんとつ)」つまり、下顎が前に突き出ている状態の改善に効果的な矯正装置です。この状態は、骨格的な成長のバランスが崩れていることが原因で起こることが多く、チンキャップは骨格的な問題に効果を発揮します。
チンキャップの仕組みはいたってシンプルです。顎の部分に装置をつけ、頭の部分にも装置をつけ、両者をゴムバンドで繋ぎます。このゴムバンドの力で、下の顎を後ろに引っ張り、それ以上の成長を抑制すると言われています。
施術に適した年齢
チンキャップは、成長期の子供、特に9歳から15歳頃、つまり小学校中学年から中学3年生頃のように顎の骨が活発に成長している時期に効果的な矯正装置です。この期間は、顎の骨がまだ軟らかく、外からの力によって成長を抑制しやすいためです。子供の受け口矯正では、この成長期にチンキャップを使用することが一般的です。
治療方法
チンキャップは、口腔内に固定されたプレートと、頭部に装着するパーツ、そしてそれらをゴムバンドで繋いだ矯正装置です。一方、頭部には、帽子のような形状のヘッドキャップを装着し、顎の部分にはチンキャップと呼ばれるパーツを装着します。パーツ同士は、ゴムバンドで連結していて、下顎を後方へ移動する力が加えられます。上顎と下顎のバランスを整え、受け口などの歯並びを改善する効果が期待できます。
治療期間
チンキャップを用いた下顎前突の矯正治療は、数ヶ月から数年かかる長期的な治療法です。治療期間中は、チンキャップを1日12時間以上装着することが推奨されていて、食事時や入浴時などを除き、自宅にいる間はこまめに装着することが重要です。装着中は日常生活に不便を感じることもありますが、治療を継続することで下顎前突症状の改善が期待できます。ただし、治療期間や装着時間は、個々の症状や成長段階によって異なるので、歯科医師の指示をしっかりと守り、治療を進めてください。
費用目安
チンキャップによる治療は基本的に健康保険の対象外となります。自費診療となるので、それぞれの歯科クリニックで費用は異なりますが、平均的には10万円から20万円程度と考えられます。
リスク
チンキャップは、下顎を後方に引き下げることで受け口を改善しますが、同時に顔全体を縦に長くする可能性も持ち合わせています。そのため、元々面長な顔立ちの方の場合、チンキャップの使用によって顔の輪郭が長くなってしまう可能性があります。また、長期的なチンキャップの使用は、下の前歯が内側に倒れるという副作用を引き起こす可能性も指摘されています。
チンキャップのメリット・デメリット
メリット
チンキャップのメリットは、手術などが必要なく受け口の治療効果が期待できること、装置をつける必要はありますが、日常生活には大きな影響を与えることが少ないことなどが挙げられます。
デメリット
デメリットとしては、長時間の装着が必要になるので、子供にしっかりと説明をして装着をする必要があり、途中で外してしまうと効果を発揮できません。また、見た目がとても目立つ装置であるため、思春期の子供は装着することに抵抗を示す可能性があります。さらには、装着期間が年単位に及ぶこともあり、装着し続ける忍耐力が求められます。