[最終更新日]: 2025/03/18
学校の歯科健診などにおいて、歯科医師から「お子様の顎が小さい」と指摘されることがあります。日々子供の顔を見ているため気付きにくいですが、専門的な視点から見ると、その特徴は明確に判断できます。
顎が小さくなる要因にはいくつかありますが、いずれの要因であれ、病気というわけではありません。ただし、早めに適切な処置をしなければ、将来的な噛み合わせに支障をきたすこともあります。
歯科健診で歯が小さいことを指摘された場合には、早期に小児歯科で専門的な診察を受けるよう推奨されています。
顎が小さいのは成長不足
「顎が小さい」という状態は、簡単に言えば「顎の成長が十分でない状態」のことです。
この状態を放置すると、将来的に歯並びの乱れが悪化し、適切に噛むことができなくなる可能性があります。その結果、栄養の消化吸収に影響を及ぼし、健康面での問題を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。
子供の顎が小さいと感じた場合には、早期に小児歯科へ相談するようおすすめします。
顎が小さいことによるリスクは?
顎が小さいことに対し、外見上のコンプレックスを感じる子供がいるかもしれませんが、親御さんとしては、外見以上に機能面や健康面に関するリスクを懸念するべきでしょう。
顎が小さいことによる主なリスクをご紹介します。
発音が困難になる
顎が小さいことで、言葉の発音に問題が生じることがあります。
顎が小さいということは、すなわち口の中のスペースが狭いということ。口の中のスペースが狭くても言葉を発することはできますが、発音する際、舌や唇の位置が不適切になることもあるため、一部の発音において明瞭さに欠けることがあります。
言葉はコミュニケーションの基盤であるため、場合によっては、意思疎通に支障をきたすかもしれません。
食事時の問題
顎が小さいことで、食事プロセスに影響が及ぶこともあります。
口の中が狭い子供は、適切に食事を咀嚼することができずに、消化不良を起こしたり、栄養の吸収効率が低下したりする恐れがあるので注意が必要です。
よく噛んでから飲み込む習慣は、健康に向けた第一歩と考えましょう。
虫歯のリスクが高くなる
顎が小さい子供は、虫歯のリスクも高まるといわれています。
歯の本数は基本的に同じですが、顎が小さいと限られたスペースに多くの歯が密集しやすくなります。その結果、歯ブラシが届きにくい部分が生じ、歯垢や歯石がたまりやすくなってしまいます。
歯垢や歯石は、虫歯や歯周病の代表的な原因です。顎が小さいことは、間接的に虫歯等のリスクを高めていることになることを理解しましょう。
顎関節症へのリスク
顎が小さいことで、顎関節症の発症リスクが高まる傾向があります。
一般的な顎の大きさの方に比べ、顎が小さい方は、食事や会話などにおいて顎関節への負担が大きいためです。
顎関節に負担が蓄積すれば炎症が起こり、顎関節症につながることもあります。
悪化すれば、口を開くことはもちろん、痛みのあまり顎を動かすことすら困難になります。
頭痛の原因になる
顎が小さいことが頭痛の原因になる場合もあります。
噛み合わせの乱れは頭痛を引き起こすことがあり、顎が小さい人の多くは噛み合わせに問題を抱えているため、結果として頭痛につながることがあります。
頭痛によって集中力が低下すると、日常生活や学習にも影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
顔のバランスに影響する
たとえば、下顎が小さいと上顎とのバランスが崩れ、相対的に上顎の歯が前に突き出した状態になります。いわゆる「出っ歯」です。
この見た目に子どもが強いコンプレックスを抱くと、精神的な成長に影響を及ぼす可能性があります。大人にとっては些細なことに思えるかもしれませんが、子供によっては自尊心に関わる深刻な問題と感じる場合もあります。
顎が小さい原因は?
顎が小さい原因にはいくつか考えられますが、その主な原因とポイントを確認してみましょう。
遺伝によるもの
主な原因のひとつは遺伝によるものです。顎の大きさや形は、両親や祖父母からの遺伝の影響を受けることがあります。
遺伝的な理由で顎が小さい場合、これを予防することはできませんが、矯正治療により噛み合わせへの影響を最小限にすることは可能です。
早い段階で専門家に相談することで、顎の大きさや形状を矯正できる可能性が高まります。気になる場合は、できるだけ早く小児矯正や小児歯科に相談しましょう。
食生活習慣の変化
かつての時代の人たちに比べ、現代人の顎は小さくなっているといわれています。硬いものをよく噛んで食べる機会が減り、噛む回数が少なくても食べられる柔らかい食品が主流となったことで、結果的に顎の発達が十分でなくなったと考えられています。
食生活習慣の影響で顎のサイズが小さくなった場合でも、早めに歯科医院へ相談することで、噛み合わせへの影響を抑えるよう矯正することが可能です。
子供へどのようなサポートができるか?
子供の顎が小さいと感じた場合、親御さんは次のようなサポートを検討してみましょう。
生活習慣を身につけさせる
顎の適切な成長を促すための生活習慣を身につけさせるようにしましょう。具体的には、バランスの取れた食事の提供と正しい姿勢の維持です。
顎の適切な成長には、栄養バランスの取れた食事が大切。適度な硬さのあるメニューもまじえて、顎の筋肉や骨に一定の負荷を与えるようにしましょう。
また、正しい姿勢を維持することも、顎の適切な成長にとって大事な要素。前傾姿勢を避け、できるだけ背筋を伸ばした状態を維持するよう促しましょう。スマホやPCの操作時の姿勢に要注意です。
子ども専門の小児歯科医に相談
子供の顎の成長で気になる点があれば、子ども専門の小児歯科医に相談してみましょう。
仮に、顎の成長に何らかの問題があったとしても、早期に専門の医師へ相談すれば、適切な処置を受けることができます。
相談が遅いほど医療機関での対応も難度が上がるため、子供の顎の大きさが気になった際には、なるべく早めに受診するようおすすめします。
矯正治療の検討
小児歯科医に相談し、矯正治療が必要と診断された場合は、できるだけ早く治療を開始することをおすすめします。
小児矯正はタイミングが重要です。たとえば、顎が小さい症例については、乳歯から永久歯に移行するタイミング(5~6歳前後)に矯正治療を始めることが有効とされています。
なお症例によっては、3歳ごろから矯正を始めたほうが良いケースもあります。顎や歯並びについて気になることがあった場合、くれぐれも放置せず、早めに小児歯科を受診するようにしましょう。
顎の大きさが気になる場合には早急に小児歯科へ相談を
子供の顎の大きさは、遺伝や生活習慣、栄養摂取、姿勢などの様々な要因により決まります。仮に、標準よりも顎が小さい場合には、将来的な噛み合わせに影響が生じる恐れもあるので注意が必要です。
子供の顎の大きさに問題がある場合、対処が早ければ早いほど将来の歯並びへの影響も軽微になります。気になる場合には、なるべく早めに小児歯科へ相談するようにしましょう。