[最終更新日]: 2025/03/18
子供がごはんをよく噛まず、簡単に飲み込んでしまうシーンを見ることがあります。パクパクとよく食べる子供を見て頼もしい気持ちになることもありますが、あまり噛まずに飲み込んでしまうと、健康上の問題が発生する恐れもあるので注意が必要です。
当ページでは、子供がよく噛まずに食事をする主な原因、噛まずに食べることの悪影響、子供に咀嚼させるための工夫等について詳しく解説しています。
よく噛まない子供の原因
あまり噛まずに食事を摂る子供には、噛まないなりの理由があります。
子供が食事をよく噛まない主な理由を5つほど見てみましょう。
お腹が減っていない
そもそも、お腹が減っていないために食事への意欲が低下し、その結果として咀嚼の回数が減少している可能性があります。
お腹が減っていない状態で食事に臨んだ場合、食べることへの意識が低下し、噛むことへの意識も低下します。その結果、少しだけ食べ物を口に入れ、よく噛まずに飲み込んでしまうということがあるようです。
ある程度の空腹感は、よく噛むためにも必要です。あまり間食を与えすぎず、規則正しい時間帯で三食を提供することが大切です。
食事に集中できない
食事以外の方向へ意識が向いてしまい、噛むこと自体を忘れてしまうケースがあります。
たとえば、子供にとって面白いテレビ番組がついている環境では、なかなか食事に集中ができないものです。むしろ意識はテレビへ向いてしまい、相対的に噛むことへの意識は低下するでしょう。
テレビ以外にも、子供の視界に遊び道具(スマホ、タブレット等を含む)がある場合や、食事とは異なる行動をしている家族がいる環境の中では、どうしても食事に集中できず咀嚼の回数が減ってしまいがちです。
麺類が多い
食卓に麺類の登場が多い家庭では、お子様の咀嚼の回数が少なくなります。麺類は柔らかいので、あまり噛まずに飲み込めるからです。
もちろん、食事メニューとしての麺類を否定しているわけではありません。うどんや蕎麦、ラーメンなどは大事な食文化の1つであり、栄養面から見ても摂るべき食材の1つです。
子供の咀嚼の回数が減ることを考慮し、麺類は適切な頻度で提供するようおすすめします。
飲み込めるものばかり
麺類に限らず、柔らかいものや飲み込むだけのものを多く摂る家庭では、適切な咀嚼習慣が身につきにくくなります。
たとえば、パンケーキや煮込み料理、ヨーグルト、プリン、スムージー、細かくカットしたフルーツなど、ほぼ飲み込むだけの食べ物を頻繁に食べていると、やがてお子様の噛む回数が減っていく恐れがあるので注意しましょう。
時には繊維質の多い生野菜や食感の強いソテーなどをもとりいれ、咀嚼や嚥下の練習を行うことも大切です。
口腔内の問題
虫歯、歯肉炎、口内炎、知覚過敏など、口腔内の何らかのトラブルが原因で咀嚼回数が少なくなる子供もいます。これは、咀嚼時に痛みが生じるため、痛みを避けようとして噛む回数を減らしてしまうためです。
また、もともと顎の筋力が弱い子供は、噛むことによる疲れを避けるため、あまり噛まずに食べられる柔らかい食事を好む傾向もあります。
口腔や顎の問題は、本人や家族の意識次第で改善されるものではありません。心当たりがある場合には、小児歯科に相談して適切な改善方法を提案してもらうことが大切です。
子供が咀嚼しない
ことによる悪影響
昔から「よく噛むことは健康に良い」といわれていますが、これは決して根拠のない言い伝えではありません。特に子供においては、咀嚼の回数が心身に何らかの影響をもたらすこともあります。
噛むことが少ない子供に起こりうる主な悪影響を見てみましょう。
消化不良
よく噛まずに食べ物を飲み込んでしまうと、胃腸で消化不良が起こります。食べ物が十分に消化されないまま体内を通過すると、便秘や下痢、腹痛などの消化系の症状に発展する恐れがあるでしょう。
また、食べ物に含まれている栄養素が十分に吸収されないことにもなるため、長い目で見れば、お子様の成長に影響が生じる恐れがあります。
よく噛むことは、お子様の健全な成長に不可欠であると心得ましょう。
発音障害
よく噛まずに食事をすると、口周りの筋肉が十分に鍛えられません。口周りの筋肉は、適切な発音を導く重要な組織。口周りの筋肉量が不十分な場合、発音に障害が生じる恐れもあるので注意しましょう。
先生や友達と円滑なコミュニケーションをとるためには、正しく発音する必要があります。発音障害で正しく発音できない場合、円滑なコミュニケーションに支障が生じるかもしれません。コミュニケーションを上手にとれないことで、自信を失い、過度に消極的な性格になってしまうこともあります。
集中力の低下
噛む回数が少ない場合、脳への血流も減少するため集中力が低下します。集中力が低下した状態で授業を受けたりスポーツを行ったりしても、十分なパフォーマンスを発揮することはできません。本来持っている自分の能力を十分に発揮できないことで、自己評価の低下から自信の喪失につながる恐れもあります。
ストレスが溜まる
モノを噛むことには、心を落ち着かせる効果があります。プロのスポーツ選手が試合中にガムを噛むのも、噛むことでリラックスし、集中力を高めるためと考えられています。
食事の際も同様に、よく噛むことで心がリラックスしやすくなります。反対に、噛む回数が少ないとストレスが蓄積しやすくなる可能性があります。ストレスがたまることで、友達とのトラブルにつながる恐れもあるため、適切な咀嚼を心がけましょう。
子供が咀嚼するための工夫は?
子供に十分な咀嚼をさせるためには、工夫が必要です。「よく噛みなさい」と言葉で伝えるだけでは、一時的な効果しか得られないことが多いでしょう。食材の選び方や食事環境を工夫し、自然としっかり噛む習慣が身につくような状況を整えることが理想です。
ここでは、子どもに咀嚼を促すための主な工夫を3つご紹介します。
食材選び
適宜、噛まなければ飲み込みにくいものを食事やおやつに交えましょう。たとえば、生野菜、リンゴ、肉、イカ、タコ、硬めの煮物などです。
もちろん、食材の大半を硬いものにする必要はありません。麺類などの柔らかいものだけに偏らないようにしましょう。
時々、噛まなければ飲み込みにくい食材を食べることで、モノを食べるときには噛むという習慣が徐々に身に付いていきます。
食事の環境を見直す
食事中は、食事に集中できる環境を整えましょう。スマホやタブレット、ゲームをしながらの食事は避け、可能であればテレビも消すのが理想的です。食事と家族の会話に集中できる環境を作ることで、自然と咀嚼への意識も高まります。
親御さんが別の行動をしていると、子供の注意がそれて食事に集中できず、噛む回数が減ってしまう可能性があります。親御さんは家事などで忙しいかもしれませんが、できるだけ一緒に食事をとるようにしましょう。
噛むトレーニング
ガムやグミなど、子供が好きなおやつを利用して噛む練習をするのも有効です。
噛む練習の際には顎や舌の運動も意識させ、口周りの筋肉を鍛えます。子供にとっては、大好きなガムやグミを食べられるため、主体的にトレーニングへ取り組みたくなるのではないでしょうか。
気になる場合には
定期検診で相談を
子供がよく噛まない主な原因、噛まずに食べることによる悪影響、よく噛ませるための工夫などについて解説しました。
なお、子供が食事をよく噛まない原因は、ここで紹介したもの以外にもさまざま考えられます。
歯並びや口腔内のトラブルが原因で噛みにくくなっている可能性もあるため、気になる場合は小児歯科の定期検診の際に相談してみることをおすすめします。