[最終更新日]: 2024/10/31
マウスピース矯正とは?
マウスピース矯正とは、専用の透明な(色をつけることもできます)装置を口に入れて矯正するワイヤーを使わな矯正治療法です。専用の装置には柔らかいタイプと硬めのタイプのものがあります。ワイヤーのように力強く引っ張られないので、痛みが少ないのが大きな特徴です。また、決められた時間以外は脱着可能なので、精神的なストレスを軽減できる魅力を持っています。
マウスピース矯正は小児から大人まで対応しており、3歳くらいから始められるものもあります。ワイヤーを使った矯正法よりも始めやすいため、小児Ⅰ期治療の矯正装置として利用されています。
マウスピース矯正の種類
ここでは、マウスピース矯正の種類ごとに、治療法の特徴と改善が期待できる症状について紹介しています。マウスピース矯正はさまざまな種類があり、どの時期から始めるか、何を目的として治療したいのかで合うものが異なります。早い段階で始めて口周りのトレーニング、あるいは混合歯列の状態で装着して完全永久歯の萌出をサポートなど、子供の歯列矯正において何を重視したいのかよく考えてみると良いでしょう。
ムーシールド
ムーシールドは、咬合、食事や発音をするときに支障が出やすい、受け口の症状に対応できるマウスピース矯正です。始めは就寝時だけ装着するようにし、慣れてきたら徐々に装着時間を伸ばしていく治療法となっています。3~5歳くらいから始められるため、骨の柔らかい幼少期のうちにあごの位置・歯並びを整える効果が期待できます。
前歯の上下の噛み合わせが反対になっている場合は、自然治癒する可能性が低くなる3歳くらいから装着を始めるのが良いでしょう。マウスピース矯正の中でもムーシールドは既製品の治療であるため治療費が安い方で、5~10万円前後となっています。ただし、小児矯正Ⅰ期の治療なので、成長による骨格の変化や永久歯が生えてくるタイミングなどで再び歯並びが乱れるリスクがあります。
治療期間 | 早い方は数カ月から半年で改善が認められますが、後戻り防止を含めると1~2年の装着が必要になります。 |
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費用の目安 | 5~10万円前後 |
インビザラインファースト
インビザラインファーストは、これまで永久歯が生えそろった後に行っていたインビザライン治療を、小児期できるように応用した治療法です。ムーシールドやプレオルソと違い、歯型を取ってつくったオーダーメイドのマウスピースで歯の移動を行っていきます。
歯の生え変わりをサポートする仕組みが充実していて、萌出が過剰に突出しないようになっていたり、永久歯が生えてくる箇所にスペースが設けられていたりと、マウスピースの精度が高いのが特徴です。
臼歯が生えていないと対応できないため、乳歯と永久歯が混在する小学校の低学年が対象となっています。また、インビザラインファーストは、毎日20時間以上の装着が必要で、価格が70万円前後とハードルが高めなので注意が必要です。
治療期間 | 1年半 |
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費用の目安 | 70万円前後 |
マイオブレース
マイオブレースは、治療が必要な歯並びの根本的原因に働きかける治療法で、一般的に習癖の改善、歯列の発育、歯の配列、保定の4ステージです。5~8歳からつけ始めて口呼吸や舌の位置を正しくすることで、あごを十分に発達させて永久歯がキレイに生えてくるよう促す治療法になります。就寝中と日中の1~2時間装着すれば、後は脱着していても問題ありません。
マイオブレースの装着期間は2年くらいが目安となっており、毎月1回の通院が必要で治療費は30万円前後かかります。マイオブレースは、呼吸・舌・飲み込みのトレーニングを行うなど独自の基準を設けているので、矯正だけでなく口周りのトレーニングを一緒に学んでいけます。歯列の乱れの原因となる舌癖を未然に防げるため、できるだけ抜歯やブラケット矯正を行わずに自然な成長と発達を促したい、また子供に変な癖をつけたくないと考えている家庭に向いています。
治療期間 | 2年前後 |
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費用の目安 | 30万円 |
T4K
T4Kは、口腔筋をきたえるためのマウスピース矯正です。舌の位置や口呼吸の改善が期待でき、永久歯に生え変わるときに歯列が乱れにくくなるというメリットがあります。ソフトとハードタイプがあり、ソフトタイプは6~8カ月、ハードタイプは6~24カ月が使用目安となっています。
装着期間が過ぎたら外しても問題ありませんが、永久歯を整列させるために完全に生えかわるまでの使用が推奨されています。T4Kの装着期時間は日中2時間と就寝時間のみで、習い事で音楽活動をしていても支障がありません。治療費用は40万円前後のため、小児矯正では割と一般的な価格帯の治療法だといえます。
治療期間 | ソフトタイプは6~8カ月 ハードタイプは6~24カ月 |
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費用の目安 | 40万円 |
マウスピース矯正のメリット・デメリット
メリット
小児マウスピース矯正のメリットは、早くから矯正治療を始めることにより、もしかしたら小児矯正のⅡ期治療が不要になる可能性がある点です。小児矯正のⅡ期治療はマルチブラケットが一般的ですが、マウスピース矯正よりも痛みがあってコストがかかる傾向があります。一方で、マウスピース矯正はマルチブラケットより痛みやコストが少なく、早く利用すれば完全永久になるときに歯列の乱れが少なくなる可能性が高くなります。
もしも、万が一小児矯正Ⅰ期のマウスピース矯正で歯並びが整わなくても、Ⅰ期とⅡ期の差額で小児矯正Ⅱ期治療へ移行できる歯科医院が多いため、早く始めたからといって損をすることはありません。また、小児マウスピース矯正を始めると、口周りの癖がなくなったり、抜歯をせずに済んだりと、子供の成長の妨げになるものを事前に解消できるメリットがあります。将来的に歯科矯正をする可能性があるなら、負担の少ない子供のうちに小児矯正をするのがおすすめです。
デメリット
小児マウスピース矯正のデメリットは、子供だけに任せられない治療法であるということです。マルチブラケットのような固定式の矯正装置と違い、マウスピースは口に装着している間しか矯正力が働きません。そのため、歯科医に決められた時間を守って装着することが何よりも大切となります。ただし、治療を子供の意思にゆだねていると、装着を怠っていたり、口周りの筋肉トレーニングをしていなかったりと、矯正治療の意味を成していない場合があります。
子供に治療を任せきりにするのではなく、親が一緒になって治療に臨む姿勢が重要です。また、小児マウスピース矯正といっても、歯列の状態によっては永久歯が完全に生えるまで装着しなくていけないケースや、後戻りして大人の歯科矯正が必要になるケースもあるでしょう。一概に、負担が軽いとは言い切れない可能性があることを踏まえたうえで、矯正治療を行うか判断する必要があります。
マウスピース矯正はどういう人におすすめ?
小児マウスピース矯正は、子供の矯正治療に向き合う覚悟を決められる人におすすめです。子供の矯正治療とはいえ、親の協力がない状態で治療矯正を進めるのはかなり難しいといえます。いざ矯正治療を始めても、子供だからこそ恐怖心や時間を守れなかったり諦めてしまうことが出てきてしまうことがあります。子供が矯正治療に挫折しそうになったときに、しっかりと相談に応えてくれる歯科医なのか、また歯科医との相性は良いのかが矯正治療が上手くいくかどうかの分かれ道となっています。
マウスピース矯正だから手間がかからないということではないため、子供と一緒に治療終了まで乗り越えられるかどうか、よく検討してからマウスピース矯正を受けるようにしてください。
監修医師紹介
- 小川衣里子 医師
https://izumi-dentalclinic.com/ - 所属学会
社団法人 日本歯科口腔外科学会 会員
社団法人 日本美容歯科医療協会 会員
社団法人 日本口腔インプラント学会 会員
福岡口腔インプラント研究会 会員
SJCD福岡 所属
大切なお子様の成長を育て見守る中でお口の状態が良好なのかそうではないのか、なかなか判断しづらい事も多いかと思います。
治療法も沢山あり、それぞれの個性に適応した治療を選択するためにもかかりつけ医にご相談されることをおすすめします。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的なクリニックや施術や商品等を推奨しているものではございません