[最終更新日]: 2024/07/30
子供の噛み合わせについて
正しい噛み合わせとは
噛み合わせとは、上下の歯の接触関係のことを言います。正常な噛み合わせとは、ご自分の歯を鏡で見るとわかりやすいですが、1本の上の歯に対して下の歯2本と接触しています。子供の場合には永久歯が生えそろっていないため、正常な噛み合わせに見えないことがあります。しかし、多くの場合は永久歯が生え揃えば正常な噛み合わせになります。注意したいのは、子供の癖です。舌の位置や口呼吸、指しゃぶりなどがあると永久歯が生えそろっても正しい噛み合わせならない場合があります。子供のお口の中の変化に気がついたら早めに歯科クリニックに相談しましょう。
悪い噛み合わせ(不正咬合)
噛み合わせが悪い状態を専門的には「不正咬合(ふせいこうごう)」と言います。いくつかの種類に分類されていますが、代表的な3つの不正咬合について見ていきましょう。
受け口
受け口とは、「下顎前突(かがくぜんとつ)」や「反対咬合(はんたいこうごう)」と言われています。通常の噛み合わせは、上顎の前歯が前にくるようになっていますが、反対咬合の場合には下顎の前歯が前に来てしまう状態です。舌の位置が癖によって下顎側にある場合や指しゃぶりなどによって起こることもあります。また、先天的な骨格によって起こる場合もあります。食べ物を噛み切るときに重要な前歯の機能がうまく使えない場合があり、咀嚼にも影響します。また、発音が不明瞭になることがあります。
叢生
「叢生(そうせい)」とは俗に言う「乱ぐい歯」のことです。歯並びが凸凹になって噛み合わせが正常でない状態となります。軽度でよく見られるものは、犬歯が歯列から飛び出ている「八重歯」です。日本ではかわいさの象徴のようになっていて、治療をしない場合もありますが、欧米では「吸血鬼の歯」とも言われて忌み嫌われます。顎の骨の大きさと歯の大きさなどがアンバランスになることが発生する原因です。叢生では、歯ブラシが届きにくい場所があるため、虫歯や歯周病などの原因となります。
開咬
「開咬(かいこう)」とはオープンバイトとも言われる症状です。通常では上下の歯を噛み合わせると、上の前歯が下の前歯にうまく噛み合わさるのですが、開咬では前歯が重ならない状態となっています。原因としては、子供の頃の指しゃぶりや舌の位置など後天的な原因が大きいといわれていますが、先天的な原因も考えられます。前歯が噛み合わさらないことで、食べ物を噛み切れず奥歯の負担が大きくなってしまいます。また、発音などにも問題が出ることもあります。
噛み合わせが悪いとどうなるのか
お口の中は、思っている以上に微妙なバランスで成り立っています。そして、そのバランスが崩れるとお口の中全体が影響を受けてしまうのです。噛み合わせが悪いと、お口の一番重要な機能である咀嚼に影響が出てしまいます。咀嚼のバランスが崩れてしまえば、顔貌にも影響が出ることもあります。また、子供に必要な栄養分を十分に摂取できない心配も出てくるのです。そして、衛生面の問題もあります。歯ブラシがうまく当たらないために虫歯や歯周病のリスクも大きくなってしまいます。噛み合わせが悪いことを放置しておくメリットは全くありませんので、早めの治療をおすすめします。
噛み合わせを悪くしないためにできること
子供の噛み合わせを悪くしないためにできることは、まず、食事のときに正しい姿勢や食べ方を教えてあげることです。背筋を伸ばして食事をすれば、奥歯で咀嚼しやすくなり、食べ物を飲み込むときもスムーズになります。一方で姿勢が悪い場合には俗に言う「犬食い」となり、前歯部分でしか食べ物を噛まずに咀嚼や消化も悪くなってしまいます。咀嚼のバランスが崩れることで、噛み合わせも悪くなります。
また、子供の指しゃぶりや口呼吸、頬杖やお口の中の舌の位置にも注意が必要です。このような癖が継続すると歯が動いていって噛み合わせが悪くなってしまいます。しかし、舌の位置などは確認するのが難しい場合もありますから、定期的に歯科クリニックで検診を受けることも予防には良いと思います。また、癖を治したり、お口の機能を向上させるために「口腔筋機能療法(MTF)」というプログラムを設置しているクリニックもあります。
噛み合わせに関係するアゴの成長は、歯の生え変わっている時期に大きく変わります。その時期に特に気をつけたいことは、口の周りの筋肉のバランスです。筋肉の中でも、唇を閉じる筋肉と舌を持ち上げておく筋肉が特に重要です。これらの筋肉が弱くなると、噛み合わせを崩してしまう危険性があるだけでなく、健康に悪影響を与える口呼吸の原因にもなります。少しでも噛み合わせが気になれば、お早めにご相談くださいね。
監修医師紹介
- 髙橋 一人 歯科医/歯学博士
昭和53年静岡県静岡市生まれ、静岡県静岡市在住。平成16年奥羽大学歯学部を卒業、平成21年奥羽大学大学院歯学研究科卒業、博士(歯学)取得。2014年に静岡県静岡市に歯科医院開業。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的なクリニックや施術や商品等を推奨しているものではございません